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……ここはPBW『シルバーレイン』『エンドブレイカー』の緋欧月・槇名のブログです。
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…皆さんこんにちは。…何とか一年も空かずに続きを出すことが出来ました♪
…でも、色々と試行錯誤して書いているので執筆ペースが遅いということをご理解くださいです。

……この小説は、三人称だったり文章が雑だったり表現が下手だったりと見るに耐えないかもしれません(あうあう)

…しかも、虐めや虐待などの表現があり、基本的に暗い話なのでそれが苦手な方もお勧めできません(ぺこり)
…付け加えると、最後くらいは救われたような気にさせる話に出来ればなぁ…って思ってます(ぇ)

……と言うわけで、それでも読んでも良い方は続きをどうぞ?









最後に父が優しく頭を撫でてくれたのはいつだっただろうか。
槇名は不意にそんなことを思った。

昔は優しかった父、でも今では暴力を振るい、罵声を浴びせる恐怖の存在だという認識が大きかくなっている。
槇名の母も、やはり今の父を恐れているのか、怯えながら毎日を過ごしていた。

そんなある日のこと。どこか父の様子が変だということに気づいた。
といっても、ただぼうっと椅子に座っているだけなのだが、それが槇名にとっては変だと思う程のことなのだ。

どこか抜け殻のような、そんな様子に多少不安を覚えながらも、恐る恐る槇名は近づいて尋ねた。

「あ、あの…お父さん、どうしたの?」
「…………」

勇気をもって話しかけたにもかかわらず、父は依然椅子に腰掛けたまま何も言わない。
聞こえなかったのかな、いや、そんな事は無いと確信していながらも、もう一度呼ぼうとして口を開きかけたが、

「………槇名」
「っ!な、なに?お父さん?」

それより先に自分の名前を呼ばれて多少動揺しながらも槇名は勤めて冷静に返事を返す。

「出かけようか…」
「え?」
「行くぞ…」
「あっ、ちょっと待って!」

急に立って玄関に向かおうとする父を慌てて槇名は追いかける。
やはり、どこかおかしいと感じてしまう。
だが、怖いと思っていても、心のどこかで喜んでいる自分がいることを槇名は感じていた。
暴力的になっていはいても、やはり槇名にとっては唯一の父親なのだから…。

家を一緒に出た槇名と父は、どこを目的にしている訳でもないのか、ただ歩き続けていた。
時々父がどこか遠い目をして立ち止まってしまうのを待つくらいだ。

そんな感じに、定まった目的もないままフラフラと歩いていると、近くの商店街に行き着いた。
昼過ぎだが、まだまだ活気があり、人が行きかっている。

店の方にも、元気に魚を売っている人、自分の野菜がどれだけ新鮮でおいしいか宣伝している人、お肉のバーゲンセールと称してかなりの格安でうっている人など様々な人がいる。
だが、それにも父は反応しないでトボトボと歩いていく。

そんな父を見ながら、槇名は居心地が悪い気分で歩いていた。
最近は、ここの商店街にはあまり近づかないようにしていたのだ。


それは、よく槇名を虐める三人組の一人、高橋健司が住んでいるから。
以前ここを知らずに通りかかったとき、健司に偶然会い、家に近づかれたら貧乏になると散々言われた。

それ以来、よほどの事がない限り近づかないようにしていた場所なのだが、早くここから出ようなどと父に意見できるはずもなく、ただ黙って付いて歩くことにしていた。

しかし、フラフラと歩いていた父がまた立ち止まり、急に方向を変えてあるところに入っていこうとしていた。
慌ててついていた槇名も後に続こうとしてふと看板を見る。

「…本屋?」

なぜそこに入ろうとしているのか分からなかったが、槇名も父に次いで本屋の中に入る。
本屋の中は、商店街の通りよりは比較的人が少なく、意外と殺風景に思えた。

父は入ってから奥にある本棚へと無意識なのか、いつも来ているような足取りで歩いていく。
よく見ると、情報誌を扱っている本棚の方へ向かっていくのが分かった。
それを見て、槇名は少し胸が苦しくなり、そして嬉しくも思ってしまった。
まだ、槇名の父親は諦めていないと、心の奥底ではまだどこかやり直せると思っているのかもしれない。

それから父は一冊手に取ると、近くにある簡易ソファに腰掛けて読み始めた。
やせこけた頬、どこを見ているのか分からない瞳。それでも、まだ必死になっているんだと、何となく槇名は感じた。

数十秒そんな父親を見ていたが、読み終わるまで時間が掛かるだろうと考えて、一人そこを離れて違うところへ移動する。

「ここかな?」

そこは、小説が並んだ本棚。
外国の小説を訳した本や、ライトノベル、文学小説、様々なものがそこにあった。
だが、槇名にとって別に本が好きだから来たわけではない。

学校で小説を読んでいるのは時間を潰す為の、または嫌な事を忘れる為の手段の一つなのだ。
だから、好きとか嫌いとかそういう理由で本を手にしている訳ではなかった。

父が情報誌を見終わる間の暇つぶし程度に見ておこうかなと思い、見に来ただけだ。
そうして、槇名はゆっくりと色んな冊子に手を取ってはパラパラとページを捲って戻す、そんな事を繰り返していた。

そこで、不意に一冊の本が槇名の目に留まった。
それは緑色のカバーで、何となく他のものより目を引いていた。
その本を手にとってタイトルを見てみると、ひらがなでたった四文字の言葉が書かれていた。

「かなりや?」

確か、鳥の名前だった気がする。そう思いながらそっと本を開き、最初のページから読み進めた。
そこには、悩みを持つ人たちが、もがきながらも進んでいくというお話だった。

家庭、仕事、病気…。それらの日常での悩みがこの本によって語られている。
最初は、ただ軽く読むはずだったのに、槇名はいつの間にかその本に引き込まれて読み続けた。

何だか、自分と同じ境遇の人が、もしかしたらこうして頑張っているというのを思うと、自分に勇気がわいてくる気がしてきたのだ。
苦労して、苦労して…でもしっかりと歩くからこそ少しずつ立ち直っていく姿は、前のような優しくて暖かい家庭を願う槇名にとって頑張れと励まされているような気がして、少し暖かくなった胸をただ感じる為に目を閉じる。

「うん…頑張らないと…」

小さく呟く。まだまだ、前のような家庭には程遠い。
親の仕事も安定せず、学校でも虐められてばかり。それでも、いつかは報われるかもしれない。

「その本、欲しいのか?」
「っ!…ぁ…お、とうさん」

唐突に後ろから話掛けられて驚きつつも振り返ると、父親は相変わらず濁ったような目で槇名を見て首をかしげる。
手には、もう雑誌がない事からそろそろここから出るということだろう。

「欲しいのか?」
「あ…えとっ…………あっ!」

どういえばいいのか、ただ見られることにオドオドしながら逡巡していると、手の中にあった本を無造作にとられてしまった。
一瞬遅れて手を伸ばそうとしたが、それより早く本を持って踵を返す父親を見て、なんとも落ち着かない気分になる。

表紙だけを見たら分からないのだが、中身を見れば虐待などの問題のものも書かれていることが分かってしまう。
出来ることならそのまま本の中身を見ずに置いていって欲しいと心の中で思っていたのだが、

「……?」

本棚に返すどころか、父親はその本を持って会計のレジへと向かって歩いていた。槇名は驚いて立ち尽くす。
そうしている間にも、父親はレジで会計を済まして袋に入れられた本を貰い、槇名の前に戻ってくる。
そして、また無造作に本を槇名に差し出してきた。

「な、なんで…?」

震える声で、でもしっかりと父親の目を見つめたまま問いかける。
そんな槇名にただ淡々とした口調で、まるで気だるそうにしながら口を開く。

「欲しかったんだろう…?」
「あ……」

差し出された本を、恐る恐る手に取る。父親はそれを確認すると、また直ぐに踵をかえして本屋の外に歩き出した。

そんな父親の後ろ姿を呆然と見ながら、槇名は買って貰った本を胸にきつく抱きしめる。
父親が暴力的になってから、これは初めてのプレゼントだ。
父親にとってはそういう事を考えて買ったわけでもないかもしれない。

それでも、初めて先に希望を見出せたような気がした。
今まで苦しかったことが、全部報われるかもしれないという未来を。

「どうした?早くこい…」
「ぁ……ぅ、うんっ!」


歩き出した父親の背中に追いつく為に走る。
もうそれしか見えていないかのようにただ父親の所へと。
それが、いつかまた家族全員で笑い合える目標であるかのように…。






…さぁ、次の話から暗いお話に再突入します(苦笑)
…頑張って続き書かないと…(書き書き…)

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» 次作を読みたいです♪
あ、あのう…泣いていいですか?(あわわ
毎回、読ませていただいてるのですがその都度泣きたくなります。
槇名さんの過去にはすごく興味があります。
それはもっと槇名さんのことを知りたいから。
大切なお友達だから。でも目を逸らしたところもありました…(俯き加減に)
勇気を出して正面から向き合ってみます。
大好きな槇名さんをもっともっと好きになるように。
アリス 2009/05/28(Thu)23:21:15 編集
» …ありがとうございます♪
…Σな、泣かないでアリスさん(あわあわ動揺)…でも、読んでもらってありがとうです。

…私も、アリスさんのことが大好きです。
…だから、こうして過去のことに触れてもそう言ってもらえるのは嬉しいですね。

…アリスさんまだ先がありますけど、最後まで付き合ってくれたら嬉しいです。
槇名 2009/06/03(Wed)18:17:35 編集
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女性
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